読書紹介1654・「玉依姫」

●「玉依姫」 阿部智里著 文芸春秋 16年版 1500円

 八咫烏シリーズの五作目。本編は、外伝にあたる。主人公は、高校生の志帆。自分のことを顧みず、人のことを心配する一途な女の子。幼い時に両親を交通事故で失い、祖母に育てられている。祖母と母の故郷の山内村には、山神に生贄を捧げる風習がある。

 ある日、突然訪れた伯父・修一に誘われ、祖母に内緒に山内村に訪れた志帆は、生贄として山神に捧げられてしまうのだ。

 ということで本書では、この山神(生まれたばかり)に仕える神使の猿と八咫烏、そして山神の母である玉依姫(この薬が志帆が務める)の、神代から引き継がれている役割が、描かれていく。

 しかし山神は、本来の自分の名を忘れていて、自分を裏切った生贄を喰らってしまう荒魂と化していたのだ。一途に山神のことを心配する志帆によって、みるみる美しい青年に成長していく山神。

 その山神と八咫烏の長である金烏との間に、かって争いがあり、金烏は神域の門を閉ざしてしまっていたのだ。その禁門を開け、再び山神に仕えた現在の金烏・奈月彦であったが、全ての金烏の記憶を継承するはずの奈月彦には、その記憶がないのである。

 山神は自分の名を忘れ、奈月彦には過去の金烏の記憶がない。果たして、過去に何があったのか。そして志帆は・・・。という、神と神使たちと玉依姫の物語でありました。