still127

送って行くよ。

早退させてもらえたって言ったら、しょーちゃんはすぐにそう言ってくれた。

大丈夫って言ったのに、心配だからって。

断りきれなくて、恐怖心もまだ完全には消えてなくて。

朝一緒に来た道を、またふたりで帰った。

海が見えるところをガタンガタンと走るローカル線はガラガラで、僕はしょーちゃんの肩に凭れて、キラキラ光る海をずっと見ていた。

シェアハウスの玄関を開けたら和と大野くんの靴があった。

よかった。帰ってきた。

とりあえず退院して無事に帰ってきたことにほっとした。

夕飯は僕が作ろう。今日は和を、大野くんをゆっくりさせてあげよう。

和が好きなものを。

ちゃんと休むんだよ。まだ雅紀も本調子じゃないんだから

考えていたことが分かったのか、しょーちゃんがそう言った。

そして玄関を閉めるしょーちゃんが。そのまま。

僕をふわっと抱き締める。

思わず笑った。

しょーちゃん?

ん?

その本調子じゃない僕に連日イケナイコトをしてたのは誰?

えーと

しょーちゃんが困ったように黙った。

そして。

イケナイコトなの?

小さな声で言うから、おかしくて。

イケナイコトだよ

そうだったのか

くすくすくす。

抱き締め合って、キスをしながら笑った。

ありがとう、送ってくれて

どういたしまして。俺の部屋でちゃんと寝て

うん

イケナイコトは、今日は自粛するから、夜もゆっくり休もう。やっぱりまだ顔色が悪い

うん、そうする。でもしょーちゃん。今日はってことは、明日は?

明日はする、と、思う

ごめんって言うしょーちゃんに、僕はまた笑った。

謝ることなんて、ないのに。

笑っていたら、しょーちゃんがまさきーってちょっと情けない声で僕を呼んだ。

気づいた?さっき

さっき?何かあった?

帰る時に、すっごい見られてたと思うけど

そう?

見られてた?誰が?誰に?

よく分からなくて、身体を少し離してしょーちゃんを見た。

しょーちゃんは眉毛を八の字にして、気づいてないなこれはって、苦笑いをしている。

雅紀は俺のコイビトだからなっ

しょーちゃん?

ますます分からなくて、どういうこと?って聞くけど、しょーちゃんは教えてくれなかった。

雅紀

キス、される。キスをする。

しょーちゃんとの明日を期待して酔うキス。

この人に、いつまででもこうしていて欲しい。抱いていて欲しい。

リアルの世界の恐怖に、耐えられる自信はまだない、から。

今度また、雅紀の休みの前の日に、マンションに泊まろう

マンションに?

マンションに。その方が

ゆっくり気兼ねなくイケナイコトができる。

僕の頬を両手で挟んで、熱っぽいキスと一緒に言われて、心拍と体温が上がる、感じ。

うん。そうしたい

僕もしょーちゃんの頬を両手で挟んでキスをして、そう答えた。

雅紀

囁くみたいな吐息の声。

僕の唇から外れたしょーちゃんの唇が、耳から首筋へとおりる。おりていく。

ここ、玄関。

しょーちゃんは、病院に戻らないといけないのに。

しょーちゃ

背中を撫でる手にゾクゾクする。

目を閉じる。

しょーちゃんの熱い息。身体。手。

ん?

二宮くん

え?

僕の肩にちょっと隠れるみたいにしてリビングの方を見るその視線を辿って後ろを見れば、生気のない顔でこっちをじっと見ている和が居た。

そのすぐ横には、変に強張った顔の、大野くん。

見られちゃったね

いつから見てたんだろう。は恥ずかしい

ブツブツ言いながら、しょーちゃんはそっと僕から腕を解いた。

恥ずかしいから行くわ

僕も恥ずかしいんだけど

頑張れ

くすくすくすくす。

笑って。

行ってくる

うん、ありがとう。行ってらっしゃい

玄関に手をかけたしょーちゃんが、素早くキスをしてきて、びっくりした。

もうっ

ごめん

まだそこに和と大野くんが居るのに。

しょーちゃんはイタズラっぽく笑って、玄関を開けて戻って行った。

僕はその背中に手を振った。

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