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反日政権の衝撃(上)「親日派を清算する」 慰安婦問題蒸し返す構え

 下記は、2017.5.10 付の産経ニュース【韓国大統領選】です。

                       記

 「日本には慰安婦合意は間違いだったと堂々という!」

 文在寅(ムン・ジェイン)は投票日前日の8日夜、ソウルでの最後の街頭演説でこう叫んだ。選挙向けの著書で文は「政権をとれば親日派を清算する」とまで断言している。

 “親日派”は韓国では今も相手を罵倒する際の表現で、ここでは大統領を罷免された朴槿恵(パク・クネ)ら保守派を指す。“親日”の朴政権が決めた合意は絶対に認めないという主張だ。

 韓国大統領選では、主要候補の対日外交の公約が一致していた。慰安婦問題の「完全かつ不可逆的な解決」を約束した日韓合意の見直しや再協議だ。

 日韓合意を認めれば選挙には勝てない。韓国では外交上の約束事も、日本がからめば国民感情には逆らえない。新政権の韓国は本気で合意をほごにし、慰安婦問題を蒸し返す構えだ。

 日韓合意の精神に反し、ソウルの日本大使館前に加え、昨年12月には釜山の日本総領事館前に慰安婦像が不法設置された。外国公館前での侮辱行為を禁じたウィーン条約に韓国はまたしても違反した。

 日韓関係が悪化を続けるなか、文は真っ先に釜山の慰安婦像を訪問。明らかに韓国世論を意識した行動だ。国際条約違反だろうが、韓国では法よりも国民感情が優先される。

 「反日」は韓国で、相変わらずポピュリズム大衆迎合主義)に容易に利用される。その手法に乗って新大統領となる文は、日韓合意の見直しを迫ってくるだろう。でなければ、韓国の国民感情が許さない。国と国との約束を一方的にないものとし、国際条約も無視。韓国の新政権は再び日本に仕切り直しを迫ろうとしている。

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 「文在寅の対北朝鮮包容政策は成功する。板門店(パンムンジョム)の作戦に参加した特殊戦司令部出身の文在寅こそが…」

 文在寅は8日夜、ソウルで行った最後の遊説で、自身が表紙を飾った米誌「タイム」アジア版最新号が米大統領、トランプと北朝鮮朝鮮労働党委員長、金正恩キム・ジョンウン)を相手にできる「ネゴシエーター(交渉人)」と紹介したことを自慢げに取り上げ、こう強調した。

 文は兵役中の1976年、特殊部隊員として南北軍事境界線の板門店で米将校2人が北朝鮮兵に殺害されたポプラ事件の収拾に携わった。「特殊戦司令部出身の私の前で安全保障の話を持ち出すな!」と続けると、歓声と拍手が起きた。

 大統領選は、金正恩政権がトランプ政権の圧力に対抗し、軍事的挑発を強めた時期と重なり、安保が争点に浮上、文の親北姿勢に批判が向かった。その度に文は「最前線で北と対峙した経験」を披瀝し、相手を黙らせてきた。

 親北姿勢を隠そうともせず、金大中(デジュン)、盧武鉉ノ・ムヒョン)政権時代の対北包容政策の継承と経済協力の拡充を訴える。3月の米紙のインタビューでは「金正恩を対話の相手として認めるべきだ」と主張した。

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 文のこうした対北融和姿勢に最も不安を募らせたのが韓国在住の脱北者だった。脱北者団体の代表らが3日、国会で記者会見し、「文が当選すれば、(各団体に所属などする)脱北者3千人余りが米国や日本、欧州への集団亡命を申請する」と表明した。

 亡命という極端な選択の背景には、文が秘書室長などとして支えた盧大統領時代の“悪夢”がある。当時、北朝鮮との友好関係の障害とみなされ、脱北者への風当たりが強まった。

 団体によると、2008年、ゴムボートで脱北した子供を含む22人が北朝鮮に送り返された。中朝国境で活動する韓国籍を持つ脱北者らが摘発され、北朝鮮に強制送還されるケースが相次いだが、盧政権は放置した。北朝鮮の人権状況の改善を目指し、昨年9月に施行された北朝鮮人権法にも文らは反対してきた。

 脱北者団体代表の李主成(イ・ジュソン)(51)は「文は人権派弁護士出身というが、政治的利害で脱北者の命を軽視しかねない」と懸念する。

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 文はなぜ、北朝鮮との関係改善にこだわるのか。一つには、両親が朝鮮戦争時に北朝鮮東部、興南から逃れてきた避難民だった影響がある。帰郷を願う両親の思いから、「統一すれば、興南に行って弁護士をしなければと考えていた」と対談集で振り返っている。

 もう一つは、自殺した盧の遺志を継ぐという“呪縛”と李明博(ミョンバク)・朴槿恵と9年余り続いた保守政権の全否定から来るものだ。自負を示すのが文の次の言葉だ。

 「盧武鉉政権では、南北間に軍事的衝突がたったの1件もなかった」

 李・朴両政権を「安保も無能だった」と切り捨てる。韓国哨戒艦撃沈や延坪島砲撃は李政権時代の10年に起きた。だが、盧政権時代には、開城(ケソン)工業団地などを通じた経済協力の下、北朝鮮が核・ミサイル開発を続け、06年に初の核実験を強行した事実から都合よく目を背けている。盧政権時代の南北融和は、経済支援というカネで買った“かりそめの平和”にすぎない。

 選挙戦序盤、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備をめぐる立場の曖昧さなどを突かれ、文は守勢に立たされていた。

 結果的に文に助けの手を差し伸べたのは、トランプだった。4月下旬、10億ドル(約1100億円)のTHAAD配備費は韓国が負担するのが望ましいと韓国側に伝えたと述べたのだ。合意を無視した発言に韓国世論が反発。文陣営は「THAADの配備決定は初めから重大な欠陥があったことが明らかになった」と攻勢に転じた。

 支持率で他候補に差を付ける中、対北政策でも自信を深め、8日夜のテレビ演説ではこう宣言した。

 「圧倒的支持をいただければ、その力で朝鮮半島の平和の扉を再び開く。北朝鮮の核問題を解決し、対話の種をまく」=敬称略

 (ソウル 名村隆寛、桜井紀雄)

 http://www.sankei.com/world/news/170510/wor1705100009-n1.html