寿司食べ放題

「 たかたん、今夜空いてるか ?

 良かったら、寿司食わせてあげるから、

 新橋まで出て来なよ 」

当時、ひょんなことから知り合った

ケンジさんの甘い言葉に誘われて、

僕はノコノコと新橋まで出かけた。

「 どうもありがとうございます !

 いやあ、こんなお店でお寿司が食べられるなんて、

 とても嬉しいです !!! 」

銀座の近くにある、

ちょっと高そうなお寿司屋さんに連れて行かれた僕は、

舞い上がっていた。

「 たかたん、遠慮しないで、

 ドンドン食べな ! 」

いやあ、ケンジさんって、

何て良い人なんだ !!!

僕は好きなだけ注文すると、

次々と握り出されて来る寿司を、

美味しそうに頬張った。

とにかく全てのネタが美味しい。

本当に美味しくて、

頬が落ちるとは、この事だ。

「 たかたん、美味いか ? 」

そう笑顔で僕に聞いてくるケンジさんは、

やっぱりとても良い人だった。

それにしても、

ケンジさんも大食漢だ。

「 ああ、お腹いっぱいだ〜 」

結局、二人で何貫食べたのだろう ・・・。

たらふく食べると、

僕はケンジさんにお礼を言った。

「 ケンジさん、ご馳走様でした。

 とても美味しかったです !」

すると、ケンジさんは ・・・

「 何言ってるんだ、たかたん。

 こちらこそ、ご馳走様。 」

「 ・・・・・・・・・・・・・・・。」

「 俺、寿司食わせてあげるとは言ったけれど、

 おごるなんて一言も言ってないよ ? 」

「 えっ !? 」

確かに、ケンジさんが、

おごるとは言っていなかったけれど、

何で僕に 「 ご馳走様 」なんて言うんだ ?

 

「 だから、寿司屋に連れて行ってあげるとは言ったけれど、

 お会計は、たかたんが払ってくれって事 !」

「 えっ !? じゃあ、ケンジさんはお金持ってないんですか ? 」

「 ああ。」

「 ああ、じゃなくて ・・・。

 じゃあ、今いくら持ってるんですか !? 」

ケンジさん、ニヤリと笑うと、

両手を広げて僕に差し出した。

そこには、

百円玉が2枚だけ乗っていた。

「 200円。これが俺の全財産。

 でも、これあげちゃうと電車賃なくなっちゃうんだよね ・・・ 」

「 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 。」

信じられない !!!

最初から人の金をあてにして、

高級そうな寿司屋に誘うなんて ・・・

怒りが込み上げて来る僕に、

ケンジさんは ・・・

「 今度、金が入って来た時に払うから。

 今日のところは立て替えておいてよ。 」

僕はしぶしぶ全額支払った。

総額3万円 !

納得が行かないまま、

僕は家路に着いた。

その後 ・・・

「 おかけになった電話番号は、

 現在使われておりません 」

ケンジさんは音信不通に。

僕はまんまと騙されたが、

これを良い教訓にしようと、

気持ちを入れ替えた。

それから数年後 ・・・

ケンジさんが、

何かの犯罪に巻き込まれて、

刺されたと聞いた。

どうやら、あっちこっちで、

金銭トラブルを起こしていたらしい。

因果応報。

自分がやった事は、

必ず巡り巡って自分に帰って来る。

そんな事を考えさせられた思い出だ ・・・。

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